「理想郷」
 
歌い出す前の 短い吸気に耳を澄ます
聴き慣れた声が聞こえ始めると
心は真っ直ぐ前を向く
 
いつからかなんて忘れてしまった
君の歌が身体に染み込んでいる日常は
いつも救いの手が差し伸べられているようで
有難くて 申し訳無い気さえする
 
溢れる想いは 言葉では表し切れないから
ただ押し黙るだけになりがちだけれど
それでも 伝え続けなくては
この小さな世界を守れない
 
周りを見れば 不確定要素ばかりで
安心することなど 遠い夢のようで
迷って 彷徨って 藻掻いて 苦しんで
はっと気がつくとまた 取り残されていて
 
他の誰でもない自分が
これまでひとりで歩いてきた道程に思い巡らせ
他の誰でもない君と
これから一緒に歩いていきたい道程を遠く見遣る
 
そんな中で見つけた ふとした瞬間光った
今はここにない理想郷への道標
このまま行けばきっと辿り着けるはずだから
それまで焦らず 君の声を聴いていよう
そこまでゆっくりと 君の歌を聴きながら歩いていこう



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