「喪失の記憶」
 
これが最後と念じて押す
送信すればもう取り消すことはできない
心を決めたのだから悔いはない
 
思いなんてそれぞれの枠において
受け取りようによって意味を変える
それでも歪まない強い芯だけが
届けばいい それだけでいい
 
いろんなことがあったけれどそれも全部
ボタンひとつでなかったことになる
怖い世界に生きていたんだと
今さら気づいてもっと怖くなる
仮面を被って他人のふりをしても
結局ここにいるのは紛れもない自分
最後くらいはこれまでを覆すように
何もなかったかのように いや何もなかったんだ
 
そして今
これまでを失い何かを取り戻す
空白の存在自体忘れて
連続する時間を生き直す



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