「彼女のために」
 
偶然が必然を呼ぶように
目の前の糸を手繰ると
今まで知らなかった
姿が見えてきた
 
彼女のために
わたしは
何ができるだろう
 
残された場所で
理由を探し出そうと
しばらく彷徨うけれど
復元できない破片が散らばる床を
不用意に踏んでしまえば
足の裏に傷が刻まれるだけ
 
闇に近い部屋の中
息を落として感じるだけにする
確かにここに有った
そして今は無いもの
 
彼女のために何ができるだろう
 
引き返したい気持ちが強くなる
抗うことは許されない
どこから来たかさえ忘れなければ
戻れるはずと信じている
 
悪循環は刃では断ち切れないから
誰かが身を奪って連れ去った
 
わたしは
彼女のために
何ができるのか
 
わからないまま書類を蹴飛ばして
すっかり慣れた黒い部屋で頭を抱える
薄々迫るのは
最初から知っていたこと
 
どんなに探しても
理由はここにはない
一緒にいなくなってしまった
元々離れられなかった
だからこそ
ここは闇のままで
次の朝は遠い
何も見えない
 
それでもまだ
わたしは
彼女のために
何ができるか
ここで考えてしまう
待ちつづけても不毛だと知りながら
 
彼女のために
彼女のために



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