「別れの詩」 |
あなたの部屋の窓から見える景色が好きで |
行くたびにずっと外を眺めていた |
街灯が点き始め薄暗くなって |
建物の輪郭が闇に飲まれるまで |
飽きもせず黙って見ていた |
あなたはそれに気づかずに |
何か別のことをしていた |
これで最後と何となく思った |
ここに来るのは最後だと思った |
見回してもわたし以外 |
わたしの欠片は何もなく |
ここにいるべきではない気がした |
あなたは何も気づかずに |
これからのことを話した |
自分勝手な言い訳で困らせた |
それさえ言えなくなると黙った |
何も言えなかったんじゃない |
何も言うべきではないと思った |
目覚まし代わりの音楽が鳴り |
ひずんだ思い出が空回りするから |
胸が痛くて少し離れた |
天井を見つめても辺りを探しても |
わたしが求めているものは |
あなたに求めるべきではない気にさせた |
あなたはあなたの世界で生きている |
寄り添うことはできても一緒には歩けない |
ふたりがひとつになることが |
どんなに複雑で重要なことか |
知らないふりをしていたけれど |
もう見ないわけにはいかなかった |
言わなくてもわかると思った |
わかってくれると信じていた |
言わなければわからなかった |
わかってくれていると信じた |
傍を抜け出して床に座った |
明けてゆく空をぼんやり眺めていた |
考えても答えが出ないのなら |
行動を答えにするしかないと |
言われたことを思い出した |
だからもうこれが最後と |
振り返って寝顔を見ていた |
傷つけも傷つけられもしない |
それでも別れはいつか来るものと |
はっきりわかって愕然とした |
何も望んでいないと言った |
それがいちばんの望みだった |
無防備にいられるわけもなく |
身構えて呼吸を落とすのに必死だった |
そのまま死んでしまえればよかった |
そんなことを願っても叶わないけれど |
すべてが終わるならこの瞬間 |
半分眠い頭で決めた |
さよなら、わたしの愛しい人 |