「それぞれ」
 
黄色い電車は
進路を南へ向けて
川を越えていく
各駅停車の逃避行
 
雲に映る夕日が
一段と濃さを増して
薄闇に紛れていく
 
ただそれだけなら
どこにでもある景色
刻み込もうとしているのは
今という瞬間
 
人の波は
飲み込まれ
吐き出されて
 
それぞれが向かう
それぞれの場所へ
 
それぞれの胸に
ひとつだけ思いを抱えて



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