「雑踏」
 
同じ目をした人たち
誰かを探すように
辺りをうかがう
悟られまいと
動かずに
視線だけ彷徨う
 
僕は何も知らない
知らないから
 
所々に咲く花の
小ささと鮮やかさに見とれ
 
私は何も知らない
知らないけど
 
また春が巡り行く
その中で
 
かろうじてつないでいた
呼吸さえ危うく
ほんの少し目を離した隙に
すべて消えた



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