「その腕」
 
夜が怖い
眠れない
考えないようにしても
浮かび上がる現実
耳を塞いで目を閉じて
深く沈みたくても
許されない
何かが引き止める
 
忘れようとしても
忘れないと思っても
動かない重い石のように
積まれていく今は
過去の上に成り立つ
 
そしてまた
記憶は千切られて
 
求めるものは遠く
追うものは離れ
それでもしがみつけるのは
その腕しかない



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