「消えていく」
 
窓を開けておくと
街道を走り去る車の音が
涼しさを連れてくる
 
どこからか流れてくる懐かしさに
目をうるませてこらえた
不本意なまでに無防備な回想が
容赦なく立ちこめて
記憶を遡るように急かす
 
わけもなく訪れた地に
思い出すことがある
何度となく通い詰めたこの場所さえ
ひとつとして同じ景色はなく
 
虫の音が響く闇に惑い
潮騒のように駆けていく光が
またひとつ消えていく



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