「あなたを抱いて」
 
確かに風は吹いていた
追い風で
何も怖がることはなく
進んでいけばよい道があった
 
求めれば失い
繋がれば消えていく
今を生きていても
一瞬先を恐れていた
心を許すことを禁じて
いつもひとりだと思っていた
 
でももう気づいてしまった
ここまで来られたのは
見えない力にひかれたからではないと
もっとはっきりした糸で結ばれて
ひとつになっていた
自分と周囲に
 
どんなに刻み込んでも忘れてしまうなら
最初から何もないほうがいい
そう思っていた
 
これまでを際限なく後悔するより
これからを着実に進む方法を
 
そして遺された音楽に耳を澄ませば
あの時感じた確かな気持ちを
ほんの少しだけでも思い出せる
それだけでも
 
今はもうここにいない
あなたのことを思いつづけている



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