「沈黙」
 
行き交う人の群れ 映すガラス窓
過ぎていく車の列 無言のまま
それぞれが それぞれとして美しい
枝の先で 揺れる薄い色の花
 
氷がすべて溶けてしまう前に
心の内をさらけ出してよ
 
待っている時間はあまりない
持っている時間もほんのわずか
だから気が 急いて急いて
 
思っていることがあるなら伝えて
何もなくても何か聞かせてよ
 
無謀ともいえる呟きに
君はまだ黙ったままでいる
それが意思表示なら しかたない
せめてその素直な眼差しをくれたら
 
都合のよいように考える癖
悪いものとばかり思っていたけれど
こういう時は その癖に頼りたくなる
 
目の前にいても届かない物悲しさ
それだけでは計り知れないもどかしさ
きっとこのままやり過ごしても
何も変わらない 沈黙



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