「夕月」
 
次第に暗くなり
夕方とも呼べぬ早い時間
少しだけ西寄りの南の空には
細い三日月が頼りなくいる
 
誰かを想うのもまたいいけれど
今のわたしは誰を想おう
 
目立たない月
深くなる闇の色が際立たせていく
見上げるたび訴えるような
配色に心を奪われて
 
大好きだった人の背中を思い出す
見つめているだけで精一杯だったことを
さりげなく心に刻むような
凛とした夕月



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