「匂い」
 
思い出したときが花
いわゆるひとつの思い出
刻み込まれた記憶のひとひら
零れ落ちるように今現れた
 
何と言えばいい
わたしにはわからない
 
なつかしい匂いがする
この匂い確かに知っている
 
燃えて焦がれて雫になって
溶けて流れて涙になって
繰り返しの鼓動
進まない秒針
逆さに世界を見るような
苛立ちを抱えながら
 
細かい字で埋め尽くすのは
伝えたいことが
たくさんあるから
書いていくうちに
本心が見えてくる
消せない思い
消せない過去
 
越えてきた波はもう
どこにもないけれど
 
思い出したときにしか
これと言えない
正体は知れない
だけど
記憶の中に
刻み込まれた匂い
 
曇り空を見上げる日々でも
この思いは変わらない



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