「幻想」
 
遠く聞こえるのはなつかしい声
 
振り返れば
 
そこには誰もいなくて
 
 
願望がそうさせたのか
思いこみが見せたのか
 
誰も真実など知らない
誰も現実など見ない
そういうものとして
進んでいく日々を
 
暑さも寒さも感じない
居心地のよい場所だけを求めて
 
なまぬるい風も
あたたかい土も
忘れた記憶の中
 
 
なつかしい声も
かすれるよう
誰もいないから
 
また幻想だと思う
また幻想だと思うしかない



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