「また」
 
そしてまた自分に言い聞かせるように
名前を何度も呼んでみる
姿は遠く見えなくなりそうでも
声は届いていると信じたい
不確かなものに頼ろうとして
多くのものを失う
だけどそれはおそらく
別の何かを得るための準備のようなもの
 
この胸が悲しい思いで一杯にならないように
つめこんでは忘れまたつめこんで
結局のところ楽しいことしか思い出さない
思い出したくないから
 
そしてまた自分に言い聞かせるように
名前を呼びつづける
もう届かないとわかっていても
それでもほんのすこしでもと
けなげすぎるほどまじめに
手にした一握りから
驚くほど強い確信を持つ
きっとそれはたぶん
勘とか思い込みとか言われる些細なこと
 
それでもまた
この胸が楽しいことで一杯になるように
失っては得てそして失って
永遠に続くような坂をのぼっていく
てっぺんははるか彼方にあるから
 
そしてまた
自分に言い聞かせるように
その名前を
呼びつづける



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