「波」
 
おとなしく待っている間に
波は幾度となく押し寄せては
記憶を道連れにして引いていった
 
忘れてしまうものだね
楽しかった時だって いつか
思い出という名前を付けて
箱に閉まって
その箱の存在自体を忘れてしまう
 
あとはもう
その端々に残るものをふと思い出しては
これは知ってる けど何か分からない
なんてもどかしくなるだけで
 
今も波の音は耳に残っているけれど
誰といたかは覚えていないんだ



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